幻の名酒


日本の食卓の主食は、いつも米でした。しかしおよそ50年ほど前までは、生産量も少なく、需要に見合うほど米は作られてはいませんでした。となると、当然酒造りに使える米の量も限られていたのです。そして酒造りは冬だけ。気温が低く、空気が澄んでいる為、酒造り・酒の保管には最適とされていたのです。自然な冷蔵で、酒をフレッシュに保存することができました。そんな理由からごく最近まで、酒は大量生産できないものとされてきました。その結果、各地方ごとにそれぞれその気候や、食べ物、地元の人の口にあった酒が造られてきたのです。地方ごとのはっきりとした味の違いは、スタイルとして今でも残っています。TppfPageひとつ例外をあげるとすれば、江戸時代1600~1868に造られていた酒です。その時代、権力を握っていた武士達の間で、酒の需要がめざましく増加しました。そこで酒造りの職人たちは特に神戸と大阪の間にある灘で、江戸の武士たちのニーズに答えようと、上品な味わいの酒を造るようになりました。灘の酒は、強いキャラクターをもった酒ではないので、特に嫌う声がなかったからでしょう、その評判が広く伝えられました。興味深いことにこの評判は、今現在でも根強く残っているのです。酒蔵の経営者が「蔵元」、酒造りを実際に行う人々が「蔵人」、「蔵人」のリーダーが「杜氏」です。酒が造られる時期は冬。よって「蔵人」たちは基本的に、毎年「蔵元」と契約を結んで働くことになっています。「杜氏」は各現場1人、料理長のような船長のような存在であり、その下で働く「蔵人」が数人います。約10人でひとつのグループとなって酒造りを行います。江戸時代の末期「寒造り」という統制がしかれて以来、酒造りは冬期集中の季節作業として確立されてました。暖かい間農業・林業・漁業などに携わっている人々が「出稼ぎ労働」として、酒造り職人グループを形成。冬の間、各地の蔵元に酒造りの専門家として雇われるのです。「蔵元」は信頼と実績のもと、「杜氏」にその年の酒造りを任せます。



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